今回は、経営者や個人と言う視点ではなく、スタッフという視点でコラムを書いてみたいと思います。題して、会社にとってのあなたは、[人財]、それとも[人罪]ですか・・・
私は、毎年、人事異動の季節になると、ある研修での出来事を思い出す。それは、私がコンサルタント会社に入社して、数年たった時の、ある企業の内定者研修のことだった。講師担当のコンサルタントが、 [ジンザイ]についての講義を行なっていた。この[ジンザイ]の話というのは、結婚式での3つの袋の話(結婚すると、大切にしなければならないのは、給料袋、堪忍袋、お袋の3つという結婚式のスピーチの定番の話)位の定番の話である。この講義内容をかいつまんで書くと、
《会社のスタッフを[ジンザイ] というが、会社にとっての[ジンザイ]には4つの種類があるのだ。
皆さんも、この4つの中の[人罪]に決してならないように、会社の宝である[人財]を目指してがんばって下さい。》と言う講義だった。その時、受講生の一人から、『先生!ただいるだけの人よりも罪な[ジンザイ]とは具体的にはどんな人ですか?』という質問があった。当時の講師は、『それは、例えば、遅刻、無断欠勤、ルールを守れない会社にとってマイナスでしかない [ジンザイ]のことです。』と自信満々に言っていた。その時、その受講生は納得していたが、私自身は何か釈然としないもの感じていた。
その後、私も、数々のマネジメントの現場に携わり、また、実際に経営者になった今、この講義には三つの補足が必要だったのではないかと感じている。今回、僭越(せんえつ)ではあるが、私が補足したいと思う。
一つ目の補足は、会社に勤めているスタッフは誰でも、最初は、会社の足を引っ張る[人罪]や、ただいるだけの存在の[人在]にはなりたくなんてない。それを、許しているのは、他でもない[経営者]なのだ。会社にいることがマイナスであり、罪になってしまう[人罪]や、貢献しないただいるだけの存在の[人在]が、許され続け、大きな顔をしている会社に明日はあるのか?私はないと断言できる。そして、そんな [人在]や[人罪]が多数いて、それを排除するために、解雇や首にするという手段しかないという状態にあるのならば、その企業が不健康である証拠である。『怠けられない風土』や『活気ある雰囲気』を形成していくのも、経営者の大きな仕事の一つだと私は思っている。すなわち、[人在]や[人罪]は、ひとりでに生れるのではなく、経営者を始めとする上司や同僚等の組織の一人一人が[人在]や[人罪]をつくりだすのだ。
二つ目の補足は、以前の講義で受講者が感じたように[人在]という人はわかりやすい。仕事はできないが、ただ存在している人は、想像しやすい。[窓際・昼行灯(ひるあんどん)・万年○長]等のキーワードが、すぐ頭に浮かぶ。しかし、あなたは、会社いることがマイナスであり、罪になってしまう[人罪]というスタッフはどんな人か想像できるだろうか?当時の講師が言ったように、遅刻、無断欠勤、ルールを守れない [人罪]を会社で見たことはあるだろうか?漫画やドラマの世界の中には、「いつもは、遅刻や無断欠勤ばかりしているダメ社員が、実は会社にとってのヒーローだった。」なんて話はよくあるが、真のビジネスの社会では存在しないだろう。もしくは、一部のデザイナー、クリエイター、職人等の専門職の中には、「腕はいいが、ビジネスマナーは身につけていないスタッフ」も存在するかもしれない。マナーがないことを容認せざるを得ない技術や実績を持っているのであれば、それは一概に [人罪]といって切り捨てられないのではないのだろうか?逆に、経営者が、それを[人罪]と認識するならば、経営者は自分の価値観に基づき、そんなスタッフを許してはならないのだ。私の考えとしては、自分の個性や信念を大切にすることは大切である。みんなが同じ歯車として働くことが良いとは絶対に思わない。しかし、個々の企業や組織に守るべき[価値観][行動理念][マナー]は持っているはずだ。だからどんな企業や組織にも、スタッフとして決してやってはいけないことは必ずあるはずなのだ。それを[人罪]という定義にするべきである。しかも、[真実の瞬間]である顧客や取引先との接点では、それぞれのスタッフが企業の代表者である。その[真実の瞬間]の度に、個々のスタッフが、自分勝手な価値観やルールで行動するのであれば、それは最早[企業]ではない。[趣味の集まり]ではないだろうか。[人罪]を定義するのは、単に、遅刻や無断欠勤などの一般常識ではなく、経営者の価値観(バリュー)が重要なのである。
三つ目は、ルールを守れない人やマナーを守れない人間より、企業にとってよりマイナスな[人罪]というのは、能力や地位が高くて、ネガティブな考えを持つ[ジンザイ]である。こういった[ジンザイ]企業の成長を妨げる可能性がある。企業にとって[変化や変革する]というのは、成長する上で欠かせないものだ。だが、ある一定の[成功仮説]を持ったキャリアや管理職が変化や変革、そして成長することを恐れ、拒絶する場合があるのだ。おかしな話かと思うかもしれない。でも、それは、現存する世の中でも、目を開いてみれば、理解できるだろう。プロ野球の新規参入に対するまわりの対応。公共事業の問題。官僚や各官庁の弊害。一般的には[変]だと思われることが横行しているではないか。もちろん、『変化が正しい』とは限らない。しかし、変化を恐れる体質が問題なのだ。何かを話し合うたびにネガティブな意見が横行し、変化が受け入れられない。しかも、明確な代替案も、他のアイディアもない。現状維持が主流を占め、それが『正しいあり方』として評価される。そういう企業に明日はあるのか?もちろん、企業のビジョンやミッション、そして理念を守るということは大切なことだ。悩んだら、そこに立ち戻って考える必要はある。しかし、[変化][変革][成長]を恐れていてはならない。[守る]ことと[動けない]ことは違うのだ。
私の尊敬する経営者の方の一人から『ジンザイは企業の成長と共に着替えていくものだ』という言葉を聞いたことがある。もちろん、人を入れ替えればよいという意味ではない。企業は変化し続けなければ、勝ち続けることはできない。だから、企業の宝である[人財]も変化し続けなければ勝ち続けることができない。すなわち、企業にとってその人が人財であり続けるためには、自身も変化し続けることが必要不可欠なのだ。あなたは、今の組織にとってどういう立場ですか?[人財]ですか?それとも[人罪]ですか?変化を恐れていますか?恐れおののいて変化の邪魔をしていませんか?