ベーカリーでドリンク提供を行う場合の「菓子製造業」と「飲食店営業」の違いを徹底解説
目次
近年、ベーカリーやカフェ併設のパン屋さんで、焼きたてのパンと一緒にコーヒーや紅茶などのドリンク提供を行うお店が増えています。しかし、店舗でパンや焼き菓子を製造販売するためには「菓子製造業許可」、その場で調理した飲食物を提供するためには「飲食店営業許可」という、2種類の営業許可が必要な場合があります。
特に、令和3年6月1日に施行された食品衛生法改正により、両許可の内容や適用範囲が明確化され、ドリンク提供の可否や条件が変更・整理されました。
本記事では、食品衛生法改正内容を踏まえ、ベーカリー・カフェ経営者やこれから開業を検討されている方に向けて、「菓子製造業」と「飲食店営業」でのドリンク提供の違いとポイントを、最新情報に基づきわかりやすく解説します。
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食品衛生法改正の背景とポイント
令和3年の食品衛生法改正では、食品衛生の確保と営業許可制度の明確化を目的に、営業許可制度の大幅な見直しが行われました。
改正の主な内容
- 営業許可業種の全国統一(34業種に整理)
- 「菓子製造業」と「飲食店営業」の定義明確化
- 「あん類製造業」と「菓子製造業」の統合
- 調理パン製造における許可要件の緩和
- HACCPに基づく衛生管理の義務化
- 営業許可の有効期間を5年に設定
これにより、ベーカリーやカフェ運営者にとって、どの許可が必要かがわかりやすくなり、施設設計や運営計画が立てやすくなりました。
菓子製造業とは?

【定義】
菓子製造業とは、社会通念上「菓子の完成品」とされる食品を製造する営業を指します。
改正により、従来別許可だったあん類製造業は菓子製造業に統合されました。これにより、あんこの製造・販売も菓子製造業許可の範囲となっています。
【対象となる製品】
- パン(※調理パン含む)
- 焼き菓子、洋菓子、和菓子
- あんこ、クリーム
- 製造して包装販売するスイーツ類
飲食店営業とは?

飲食店営業とは、その場で調理した飲食物を、施設内で提供することを主目的とする営業です。
令和3年改正により、従来別許可だった「喫茶店営業」が廃止され、すべて「飲食店営業許可」に統合されました。つまり、カフェ、レストラン、居酒屋など、その場で食事やドリンクを提供する店舗はすべて飲食店営業許可が必要となりました。
ドリンク提供における両許可の違い

今回の法改正により、菓子製造業許可のみでどこまでドリンク提供ができるかが明確になりました。
【菓子製造業で可能なドリンク提供】
菓子製造業許可を取得している施設では、以下の条件で飲食店営業許可が不要とされています。
条件
- 客が店舗で購入したパンや菓子と一緒に飲むための飲料提供
- 飲料提供が販売した菓子・パンの飲食を補助する範囲であること
- 無料または提供価格が菓子・パンの対価に含まれる場合(いわゆるサービスドリンク)
具体例
- 無料のセルフサービスコーヒー
- 店内のイートインスペースに設置したウォーターサーバー
- パン購入者に提供する簡易なティーバッグのお茶
※飲料を販売目的で単独提供する場合や、調理行為が伴う場合(カフェドリンクなど)は、別途飲食店営業許可が必要になります。
【飲食店営業でのドリンク提供】
飲食店営業許可を取得している場合、ドリンクの調理・提供に制限はありません。
可能な提供内容
- エスプレッソマシンで淹れたコーヒー
- 紅茶、ハーブティー、スムージーなどの調理ドリンク
- アルコール飲料(※酒類提供には別途「酒類販売業免許」が必要)
- 店内提供・テイクアウトどちらも可
イートインスペースを設け、カフェスタイルの営業を行う場合は必ず飲食店営業許可が必要です。
【改正で明確化された特例】

令和3年改正で特に重要な変更点は以下の2つです。
① 菓子製造業許可のみでのイートイン提供が可能
店内にイートインスペースを設け、購入したパンや菓子とともに飲み物を提供する場合
→ 飲食店営業許可は不要(※提供飲料があくまで「購入した商品を食べるための補助」とみなされる場合)
② 調理パン製造に別許可不要
調理パン(総菜パン)については、従来、そうざい製造業許可や飲食店営業許可が必要とされるケースがありましたが、令和3年改正により、菓子製造業許可のみで製造・販売が可能と明確化されました。
実際の営業スタイルごとの許可必要区分

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営業スタイル |
必要な許可 |
|
パン・菓子の製造販売(イートインスペースなし) |
菓子製造業許可 |
|
店内イートインスペースで、購入したパンに無料セルフドリンクを添える |
菓子製造業許可 |
|
店内で調理したドリンクを提供するカフェ併設ベーカリーを営業 |
菓子製造業許可+飲食店営業許可 |
|
店内でパンや菓子を提供しながら、アルコール飲料も提供する |
菓子製造業許可+飲食店営業許可+酒類販売業免許 |
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調理パンを製造・販売する |
菓子製造業許可(改正により他許可不要) |
HACCPによる衛生管理の義務化
改正食品衛生法では、すべての食品事業者にHACCP(ハサップ)に基づく衛生管理の実施が義務化されました。
菓子製造業・飲食店営業ともに、日々の衛生管理・記録保存が必要です。特にドリンク提供を行う場合は、調理器具の洗浄・保存温度・提供場所の清掃など、衛生管理計画に盛り込む必要があります。
【まとめ】営業許可の違いと選び方
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項目 |
菓子製造業 |
飲食店営業 |
|
ドリンク提供 |
購入した菓子・パンに添える形で簡易提供のみ可 |
その場で調理したドリンク提供可 |
|
イートインスペースの提供 |
菓子・パン購入者向けの簡易飲料提供なら可 |
飲食を主目的とするイートイン営業が可能 |
|
テイクアウトドリンク販売 |
不可 |
可能 |
|
調理パン製造 |
可能(改正で明確化) |
調理販売のみ可 |
|
アルコール提供 |
不可 |
可能(酒類販売業免許が別途必要) |
開業時の注意点と保健所への相談
営業許可の取得にあたり、特に以下の点にご注意ください。
- イートインスペースの設置計画
- ドリンク提供の範囲
- 設備基準の確認
- HACCP対応の衛生管理体制の整備
また、地域によって保健所の運用が異なる場合があるため、開業前に必ず管轄の保健所へ事前相談することをおすすめします。
【最後に】
令和3年の食品衛生法改正により、菓子製造業と飲食店営業の許可内容は明確化され、事業者にとって判断しやすい制度になりました。
ベーカリー・カフェ運営を考えている方は、自店の営業スタイルに応じて必要な許可を正しく取得し、安全・安心な食品提供に努めましょう。
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