パン屋を開業したらいくら稼げる?年収の実態を徹底解剖!

目次
パン屋さんの年収は、日本の平均年収に比べてどの程度の水準かご存知ですか? そもそも、同じパン職人でも「就業者」と「開業したオーナー」とでは年収が大きく異なります。
そこで今回は、パン屋の給料・ボーナス・年収をさまざまな角度から深掘りしたうえで、就業者と開業したオーナーとでは生涯年収がどの程度違うのか比較してみました。
パン職人の「働き方」は大きく分けて2つ
パン職人の年収は、雇用形態・性別・年代といった様々な条件によって「差」があります。
中でも、給料や年収に差がつく代表的な要因と言えるのが、「働き方」の違いです。
▼パン職人の働き方
- 就業者(被雇用者):パン屋/パン工房を備えているホテルやレストラン/パン工場/製パンスクール
- 開業(事業主):パン屋のオーナー/パン教室の先生
どちらがより高い年収を得ているのか、「パン屋に勤めている就業者」と「個人事業主として開業した経営者」それぞれについて、公的資料や専門家の調査結果を元にまとめてみました。
▼関連コラム
パン職人になる方法3つ!1日の仕事の流れ・収入・資格・開業のフローも解説
パン屋さんに勤めている人(就業者)の年収は?
まずは、パン屋さんに勤めている「就業者」の給料・ボーナス・年収に関連する情報を見てみましょう。
▼就業者の関連情報
- パン製造・パン職人の平均年収(全国統計データ)
- パン屋・類似業種・日本の平均年収を比較
- パン屋の給料・ボーナス・年収を「性別」で比較
- パン屋の給料・ボーナス・年収を「年代別」に比較
- パン屋の賃金を「雇用形態」で比較
- パン屋の給料・ボーナス・年収を「地域別」に比較
パン製造・パン職人の平均年収(全国統計データ)
パン製造に携わる就業者の平均年収は、全ての企業規模を対象にすると「約335万円」、10人以上のみを対象にすると「341万円」です。
▼年収に関する3つの全国統計データ
調査対象 | 年収 | 引用元(情報ソース) |
---|---|---|
全ての企業規模 | 3,347,000円 | 厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査 |
10人以上の事業所 | 3,406,500円 | 政府統計の総合窓口e-Stat 2019年度版 |
上記の調査結果を踏まえると、売り上げが一般的で従業員が10人にも満たない街のパン屋さんで働いている方の年収は、10~20%ほど低い300万円前後と思って良いでしょう。
ちなみに、厚生労働省に帰属する「職業情報提供サイト 日本版O-NET」では、パン製造およびパン職人の職探しに役立つ情報についても一般公開されています。
▼求職に役立つ情報
- 就業者数:1,236,720人(平成27年国勢調査)
- 労働時間:165時間(令和2年賃金構造基本統計調査)
- 平均年齢:42.4歳(令和2年賃金構造基本統計調査)
- 有効求人倍率:1.06倍
パン屋・類似業種・日本の平均年収を比較!
製パン関連の企業に勤めている方の給料や年収は、他の仕事と比べてどの程度の水準なのでしょうか?
まずは、日本の平均年収や共通点の多い業種と比較した一覧表を見てみましょう。
▼平均年収の違い
業種 |
給料(月額) |
賞与+特別手当(年間) |
年収 |
---|---|---|---|
全業種 |
307,100円 |
646,000円 |
4,331,200円 |
パン・洋生菓子製造工 |
251,000円 |
394,500円 |
3,406,500円 |
調理士 |
252,600円 |
382,200円 |
3,413,400円 |
調理士見習 |
207,800円 |
104,500円 |
2,598,100円 |
給仕従事者 |
236,900円 |
220,100円 |
3,062,900円 |
引用元:厚生労働省 政府統計の総合窓口e-Stat(2019年:10人以上の事業所)
一覧表を見て分かる通り、パン職人の給料・ボーナス・年収は「調理士」とは同等の水準ですが、「日本の平均年収」と比べると明らかに低く、約79%にとどまっているのです。
しかも、一覧表に記載している「パン・洋生菓子製造工」の賃金は公的機関が実施した信憑性の高い調査結果ではあるものの、「10人以上の事業所」という条件がついており、大手チェーン店も含まれています。
したがって、10人以下の小さなパン屋さんに限定すると平均より10~20%ほど低いのが実情です。
ちなみに「調理士」とは、国家資格である調理師免許を取得している方だけでなく、有資格者の監督下で調理に従事している全スタッフの総称です。
パン屋の給料・ボーナス・年収を「性別」で比較!
製パン技術ありきと思われがちはパン職人ですが、男性と女性とでは賃金が大きく異なります。
その根拠となっているのが、厚生労働省によって実施されている全国統計データの結果です。
▼性別による賃金の比較
年齢 |
勤続年数 |
給料(月額) |
賞与+特別手当(年間) |
年収 |
|
---|---|---|---|---|---|
男性 |
40.3歳 |
12.0年 |
271,700円 |
509,400円 |
3,769,800円 |
女性 |
40.2歳 |
9.2年 |
213,800円 |
255,400円 |
2,821,000円 |
差額 |
- |
- |
57,900円 |
254,000円 |
948,800円 |
男性の賃金に比べて女性の給料は-21%、ボーナスなどの手当ては-50%、年収は-25%と実に100万円近くもの差があるのです。
参考考までに、全ての業種について男女別に集計された日本の平均年収についても把握しておきましょう。
▼性別による日本の平均年収
- 男性:5,322,000円
- 女性:2,926,000円
パン屋の給料・ボーナス・年収を「年代別」に比較!
パン製造に携わる就業者の賃金は下記の通りです。
▼年代による賃金の比較
性別 |
給料(月額) |
賞与(年間) |
年収 |
|
---|---|---|---|---|
20~24 |
男性 |
22.7万円 |
35.0万円 |
307万円 |
女性 |
20.9万円 |
27.2万円 |
278万円 |
|
25~29 |
男性 |
25.2万円 |
44.5万円 |
347万円 |
女性 |
21.9万円 |
30.8万円 |
294万円 |
|
30~34 |
男性 |
28.0万円 |
46.0万円 |
382万円 |
女性 |
21.0万円 |
25.8万円 |
278万円 |
|
35~39 |
男性 |
28.5万円 |
48.2万円 |
390万円 |
女性 |
22.6万円 |
27.0万円 |
298万円 |
|
40~44 |
男性 |
29.7万円 |
50.6万円 |
407万円 |
女性 |
21.1万円 |
21.6万円 |
275万円 |
|
45~49 |
男性 |
31.2万円 |
56.0万円 |
431万円 |
女性 |
20.3万円 |
15.4万円 |
259万円 |
|
50~54 |
男性 |
30.5万円 |
47.6万円 |
414万円 |
女性 |
21.6万円 |
22.1万円 |
282万円 |
|
55~59 |
男性 |
30.8万円 |
54.6万円 |
425万円 |
女性 |
20.5万円 |
14.1万円 |
261万円 |
男性の平均年齢にあたる40.3歳の年収は407万円、女性の平均年齢にあたる40.2歳の年収は275万円となっています。
かなり格差が開いている印象ですが、パン屋さんで働く女性は正社員よりもパートやアルバイトが多いからでしょう。
パン屋の賃金を「雇用形態」で比較!
この段落では、パン屋さんの賃金を3種類の雇用形態で比較してみましょう。
▼雇用形態による賃金の比較(引用元:株式会社カカクコム 求人ボックス 給料ナビ)
- 正社員の年平均年収:350万円
- アルバイト、パートの平均時給:944円
- 派遣社員の平均時給:1,196円
なお、国税庁が実施した「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収は「正規雇用」が496万円、「非正規雇用」が176万円です。
パン屋の給料・ボーナス・年収を「地域別」に比較!
下記の一覧表では、勤務形態を問わず正規・非正規を合算した賃金を比較しています。
▼地域による賃金の比較(正規・非正規の合算)
地域 |
性別 |
給料(月額) |
賞与+特別手当(年間) |
年収 |
---|---|---|---|---|
東京都 |
男性 |
312,600円 |
764,100円 |
4,515,300円 |
女性 |
273,700円 |
337,000円 |
3,621,400円 |
|
神奈川県 |
男性 |
274,100円 |
532,300円 |
3,821,500円 |
女性 |
198,900円 |
175,100円 |
2,561,900円 |
|
千葉県 |
男性 |
207,200円 |
187,300円 |
2,673,700円 |
女性 |
244,100円 |
147,400円 |
3,076,600円 |
|
埼玉県 |
男性 |
307,500円 |
605,700円 |
4,295,700円 |
女性 |
224,300円 |
281,200円 |
2,972,800円 |
引用:賃金構造基本統計調査 / 平成29年賃金構造基本統計調査 一般労働者 都道府県別
上記の通り、パン職人の賃金が最も高いのは男女共に東京都になっています。
一方、非正規の時給と年収を比較してみると、アルバイトやパートよりも派遣社員の方が高めになっていました。
▼地域による賃金の比較(非正規のみ)
地域 |
アルバイト・パートの時給 |
派遣社員の時給 |
年収 |
---|---|---|---|
関東の平均 |
986円 |
1,360円 |
337万円 |
東京都 |
1,042円 |
1,648円 |
358万円 |
神奈川県 |
1,036円 |
1,400円 |
349万円 |
千葉県 |
970円 |
1,300円 |
340万円 |
埼玉県 |
956円 |
1,302円 |
353万円 |
開業したパン屋さんの年収は?
残念ながら、パン屋さんを開業した個人事業主だけを対象にした公的統計データはありません。
あくまで当校リライブを卒業された生徒さんの実績から言うと、開業後の経営状態によって下記のような傾向があり、350万円が成否のボーダーラインになっているのです。
▼開業したパン屋さんの年収
- 成功しているパン屋さん:350万円~
- 発展途上のパン屋さん:350万円以下
上記はあくまでオーナー様の年収であり、「売り上げ」や「純利」ではありません。
つまり、開業資金はかかるものの、就業者としてパン屋で働いている方の平均年収(約335万円)と比べると、開業した方が「伸びしろ」がある分、より多くの年収が見込めるのです。
中にはアレルギー体質の方に人気のヴィーガンパンを提供する、急速冷凍を導入したネット販売を展開するといった工夫を凝らし、500万円以上の年収を得ている卒業生もいらっしゃいます。
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生涯年収が高いのは「就業者」?それとも「開業」
一例として、それぞれの条件下で算出した「生涯年収」について比較してみましょう。
▼就業者の生涯年収
※新卒で22~60歳まで働いた場合
年数 |
年収 |
小計 |
|
---|---|---|---|
22~24 |
3 |
287 |
861万円 |
25~29 |
5 |
318 |
1,590万円 |
30~34 |
5 |
335 |
1,675万円 |
35~39 |
5 |
356 |
1,780万円 |
40~44 |
5 |
359 |
1,795万円 |
45~49 |
5 |
359 |
1,795万円 |
50~54 |
5 |
349 |
1,745万円 |
55~60 |
6 |
344 |
2,064万円 |
合計 |
13,305万円 |
▼開業の生涯年収
※22~30歳までパン屋で修業し、開業して31~60歳まで働いた場合
年齢 |
年数 |
年収 |
小計 |
備考 |
---|---|---|---|---|
22~24 |
3 |
287 |
861万円 |
修行期間 |
25~29 |
5 |
318 |
1,590万円 |
修行期間 |
30 |
1 |
335 |
335万円 |
修行期間 |
31~35 |
5 |
300 |
1,500万円 |
開業 |
36~40 |
5 |
350 |
1,750万円 |
350万の目標を達成 |
41~50 |
10 |
403 |
4,030万円 |
15%アップ |
51~60 |
10 |
463 |
4,630万円 |
15%アップ |
合計 |
14,696万円 |
上記の結果、就業者の生涯年収が13,305万円だったのに対し、開業の生涯年収は14,696万円と1,391万円も多く稼げると分かります。
より大きな収入を得たい方は、開業という選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、パン屋のオーナーを目指すには製パン技術はもちろん、何より開業資金という初期投資が欠かせません。
当校リライブでは、製パンに関するスキルに加え開業資金を抑えるテクニックや経営のノウハウも提供しています。
ご興味のある方は、ぜひリライブアカデミーの公式サイトからお気軽にお問い合わせください。
まとめ
パン職人の年収は、働き方によって格差が大きいのが実情です。
就業には安定性という大きなメリットがある反面、同じパン屋でも開業したオーナー様には年収アップのチャンスがあります。
「好きなパン作りで生計を立てたい!」「一国一城の主となって収入を増やしたい!」という方は、パン屋の開業に挑戦してみてはいかがでしょうか。