猫カフェを開業する流れ!資金の目安・物件の選び方・失敗しないコツをご紹介
目次
年々、多様化しているカフェ業界。
中でも従来のカフェや喫茶店と一線を画しているのが、マンガ喫茶やインターネットカフェと同様に時間と空間を提供して利益を産み出す「猫カフェ」でしょう。
ただし、接客用の猫さえ手配すれば無条件で収益が得られるという訳ではありません。
そこで今回は、猫カフェを開業する流れ・資金の目安・必要な資格・物件の選び方・注意点についてまとめてみました。
猫カフェを開業する流れ
猫カフェと一般的な喫茶店とでは、開業までに準備すべき事柄に多少の違いがあります。
スムーズに猫カフェが開業できるよう、あらかじめ「オープンまでの流れ」を把握しておきましょう。
▼猫カフェを開業する流れ
- 1、「事業計画書」を作成する
- 2、「開業資金」を調達する
- 3、「必要な資格」を取得する
- 4、「店舗物件」を選ぶ
- 5、「猫」を手配する
ここからは、それぞれのプロセスについて個別に解説します。
なお、参考までに一般的なカフェを開業する際のプロセスについてもご一読ください。
カフェ開業前の疑問点まとめ!準備期間のスケジュールや開業資金を解説
猫カフェの事業計画書に記載すべき項目
最初に取り掛かるべきなのが、「事業計画書」の作成です。
事業計画書には、「どのような猫カフェを運営したいのか」という基本方針をはじめ、自家製の飲食を提供するのか、それとも既製品を提供するのかなど細部まで検討した結果を記載していきます。
▼事業計画書に記載する代表的な項目
- 会社概要:屋号、住所、代表者名など
- 経営理念:コンセプト、運営方針
- 事業の目的:捨て猫と里親をマッチングさせる…など
- 事業の概要:どのようなサービスや商品を提供するのか
- 収支計画:家賃・猫の飼育費・広告宣伝費などの支出と、収益の見通し
ここからは、猫カフェの事業計画書で見落とされがちな重要ポイントについて見てきましょう。
▼見落とされがちなポイント
- どのような飲食物を提供するか?
- 営業時間を何時までにするか?
どのような飲食物を提供するか?
提供する飲食を、猫の餌だけに限定することも可能です。
実際、「人件費を削減したい!」「手軽に始められるワンオペで運営したい!」という理由から、あくまで「触れ合えるスペース」や「出会いの場」だけをコンセプトにしている猫カフェも珍しくありません。
しかし、来店して下さったお客様に対してコーヒーやソフトドリンク、パンケーキなどの軽食を提供する場合は、「手作り」か「既製品」かによって許可の必要性が違ってきます。
▼提供する飲食物の種類と許可の必要性
- 店舗内で調理した飲食物を販売する:「飲食店営業許可証」の認可が必須
- 既製品だけを販売する:「食品衛生に関する許可」は不要
飲食店営業許可の申請窓口は各市区町村によって多少の違いはあるものの、担当課の名称に「衛生課」が含まれているケースがほとんどです。
▼飲食店営業許可証の申請・認可について
- 申請時期:開業する2週間前まで
- 許可証が交付されるまでの期間:申請から1週間ほど
- 申請者の条件:「食品衛生責任者」の有資格者
一方、店内で提供する飲食物を既製品だけに限定する場合は、食品衛生に特化した許可は必要ありません。
ただし、下記のような衛生管理はカフェの基本コンプライアンスとして徹底するように通告されていますので、あらかじめ内装工事の段階から工夫を講じておく必要があります。
▼既製品を提供する際に徹底すべき衛生管理
- 厨房やカウンター内に、猫が入れないようにガードしておく
- 食品の陳列棚、ストッカースペースなどに猫を入れてない工夫
営業時間を何時までにするか?
猫カフェの営業時間は、動物愛護法で定められています。
動物愛護法が2012年に改正されて以降、動物の展示を伴う猫カフェ・ペットショップなどの営業時間は、原則的に20時までとなりました。
そもそも猫は、犬よりも人と関わるとこでストレスを受けやすい動物ですから、営業時間を短くすることで体調不良の予防に繋がるのです。
また、東京都内では猫カフェの多くが大人だけを対象にしており、子供の利用を断るスタイルで運営されています。
これも猫へのストレスを最小限に抑え、お互いが快適に過ごすための工夫なのです。
22時まで営業する条件は?
猫カフェの営業時間は原則的に20時までですが、例外として22時まで認められるケースもあります。
ただし、20時以降も22時まで営業するには「中央環境審議会の動物愛護部会」という環境相の諮問機関が定めている下記の条件を全て満たしていなければなりません。
▼22時まで営業する条件
- 全ての猫が、生後1年以上であること
- 11歳以上の高齢猫には、定期健診を受けさせること
- 猫の労働時間が、1日あたり12時間を超えないこと
- 猫が店舗内、または施設内を自由に動き回れること
- 猫が落ち着けるよう、接客スペースから休息スペースへ自由に移動できること
猫カフェの開業資金の目安は?
結論から言うと、猫カフェの開業資金の目安は「どこで運営するか」「手作りの飲食を提供するか」の2点によって大きく異なります。
たとえば、既製品の飲食だけを提供するケースでも場所によって倍以上の差が出るのです。
▼猫カフェ開業資金の相場
- 自宅をリフォームして開業する場合:400万円ほど
- 新規で店舗を借りる場合:1,000万円ほど
特に猫カフェならではの経費として下記の項目が挙げられます。
▼猫カフェならではの経費
- 猫の購入費、受け入れ費用
- 爪研ぎやタワーなど猫用の設備
- 餌代
- トイレ用品など、飼育に関する消耗品
- ワクチン接種費用、健診や検査費用、虚勢費用
参考までに下記の記事を参照し、一般的なカフェの開業資金についても把握しておきましょう。
特に融資を希望されている方は、事前のリサーチが失敗を未然に防ぐ大きなヒントになりますので、ぜひご一読ください。
▼参考コラム
カフェ・喫茶店の開業資金はいくら?3タイプの開店資金が一目で分かる一覧表
カフェの事業計画書で融資担当がチェックしているポイントは?全17項目を解説
カフェの開業支援!運営・店舗づくり・雇用に役立つ助成金や補助金
猫カフェの開業に必要な「資格」や「届け出」4つ
ビジネスとして猫カフェを開業する際には、下記のような資格の取得や届け出が義務付けられています。
▼必要な資格・届け出の種類
- 「動物取扱責任者資格」の取得
- 「第一種動物取扱業」の届け出と常駐
- 「防火管理者」の資格取得
- 「食品衛生責任者」の資格取得
「動物取扱責任者」の資格取得
3つの条件の内、1つでも当てはまっていれば動物取扱責任者になることができます。
▼動物取扱責任者になれる条件
- 半年以上、猫カフェで正社員またはアルバイトとして働いていた人
- 猫の飼育について学べる専門学校を卒業している人
- 獣医や家庭動物管理士など、猫の飼育に関する知識や技術を習得したと証明できる資格を持っている人
ただし、資格取得時に動物取扱責任者研修を受講するだけでなく、年1回以上の継続研修も必要です。
ちなみに、営利目的で動物を取り扱う事業者は店舗ごとに動物取扱責任者を常駐させなければなりません。
店舗の掛け持ちができないため、店舗の数だけ動物取扱責任者を選任して動物愛護管理法という法令を順守する必要があるのです。
「第一種動物取扱業」の届け出と常駐
営利を目的とする猫カフェを開業するには、自治体に対し「第一種動物取扱業」としての届け出が必要です。
申請を行う前に、店舗ごとに常駐が義務付けられている動物取扱責任者を選任しておきましょう。
▼第一種動物取扱業の申請方法
- 届け出先:都道府県知事や市長
- 申請の手順や基準:自治体のホームページを参照
- 申請手数料:15,000円ほど
「防火管理者」の資格取得
防火管理者の有資格者が必要なのは、収容人数が30名以上のカフェと定められています。
ただし、座席数が基準となる一般的なカフェとは違い、スペースを複数のお客様で共有するのが猫カフェの特徴。
たとえ座席数が30席に満たなくとも、不特定多数の来客が予想される猫カフェでは防火管理者資格を取得しておくのが基本です。
防火管理者資格の取得方法や条件、手順や費用については下記の記事で詳しく解説しております。
▼参考コラム
カフェ・喫茶店の開業に調理師免許は必要?役立つ資格・スキル・届出を解説
「食品衛生責任者」の資格取得
店内で飲食物を製造・販売する場合は、動物取扱責任者と同じく「食品衛生責任者」も必ず店舗ごとに1人は必要です。
▼食品衛生責任者資格の取得方法
- 各都道府県の食品衛生協会が開催している講習を受講する
- 自治体の保健所にて資格を申請する
- 自治体から任命通知が届き、資格の取得が完了
この他、店舗内で製造した飲食物を提供する際には前述した「飲食店営業許可証」の申請・認可も必要となります。
一方、既製品の飲食物だけを提供する場合は「食品衛生責任者」も「飲食店営業許可証」も必要ありません。
猫カフェに最適な物件の選び方
猫カフェの物件選びは、「エリア」と「店舗」によって注目すべきポイントがあります。
▼エリアの選び方
- ターゲットの多くが長時間の滞在を好むため、カップルや家族連れが多いエリアを選ぶ
- 飲食や衣類など、臭いを提供するテナントが多いエリアは避ける
また、会社帰りのサラリーマンやOLをターゲットにするなら、所定の条件を満たして22時まで営業できるように手続きを行っておきましょう。
▼店舗の選び方
- 飲食用とお客様用の洗い場の他に、猫用として2箇所の洗い場が理想
- 空調設備が整っている物件を選ぶ
猫カフェはドックカフェよりも騒音のリスクが低い反面、糞尿の臭いが大きな障壁になりがちです。
臭いを警戒するテナントを避けるのはもちろん、開業前には忘れずに挨拶まわりを済ませておきましょう。
猫を手配する方法3つ
最も収益が高いのは、ペットショップやブリーダーと提携して「猫を販売」するスタイルです。
事実、一昔前の猫カフェはそのほとんどがペットショップのオーナーが兼務していました。
しかし、「捨て猫」が社会問題となるにつれて「保護猫」を扱う猫カフェが急激にシェアを伸ばしているようです。
▼猫を手配する方法
- 保護猫
- 自分のペット
- ペットショップやブリーダーと提携する
「保護猫を飼うには相性が心配…」という方はもちろん、「通っている内に愛着がわいてきた!」という理由から、里親になる方も珍しくありません。
一方、保護猫を扱う場合は地域のボランティア団体との関係構築が必須となるうえ、ビジネスとして収益を上げる工夫が必要となります。
保護猫を検討しているなら、飲食の提供はもちろんグッズの販売といったマーケティング戦略がかかせません。
猫カフェ開業のQ&A!よくある失敗と注意点
猫カフェの開業を目指す生徒さんからは、当校の講師に多くの質問が寄せられています。
中には短期間で閉店せざるを得なくなった失敗例もありますので、事前に注意点を把握しておきましょう。
▼猫カフェ開業で失敗しないための注意点
- トイレ臭の対策は最大の難関
- 閉店後や休日のお世話はどうするの
- ワクチン接種でトラブル回避
- 猫のストレスを緩和する方法は
なお、当校の「カフェコース」ではスキルの習得や開業に必要なノウハウなどを提供しております。
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トイレ臭の対策は最大の難関!
最大の難関は、何と言っても店内に漂う「猫のトイレ臭をいかに防ぐか」という点でしょう。
店内に猫のトイレ臭が充満していると、下記のような悪影響に直結しかねません。
▼トイレ臭による被害
- 一気に複数の猫が感染症を患った
- 開業前に見込んでいたほど、飲食の需要が伸びない
- お客様の滞在時間が短くなった
- 客足が、同エリアのライバル店に移ってしまった
- 近隣のテナントからの苦情が増え、閉店に追い込まれた
お役様と猫が共に快適な空間と時間を共有できるよう、下記のような対策でトイレ臭の予防に努めましょう。
▼トイレ臭の対策
- 糞や尿の掃除を徹底する
- 小まめに換気する
- 空気清浄器など、室温に影響を与えない換気設備を設置する
- 営業日、定休日を問わず365日、対策を継続する
閉店後や休日のお世話はどうするの?
自分のペットに接客させるならともかく、購入した猫や保護猫を扱っている場合は「閉店後の店内=猫の暮らしの場」です。
当然ながら、閉店後はもちろん定休日であってもエサやりやトイレの世話といった猫の世話は手が抜けません。
生き物を扱っている以上、閉店時には元気だった猫が夜中に突然、体調を崩すこともあるのです。
猫カフェは365日24時間、休みなく営業しているようなもの。
閉店後や休日でも様子が把握できるよう、「見守りカメラ」などで常に店内をリモート監視しておくべきでしょう。
ワクチン接種でトラブル回避!
猫カフェは、お客様に「憩の場」を提供するというだけでなく、猫と里親を結び付ける「縁結びの場」でもあります。
なにかとメリットばかりが注目されがちな猫カフェですが、その一方で大きなクレームに繋がるリスクも軽視できません。
中でも致命的なのが、猫から人にうつる感染症のリスクです。
▼猫から人間に感染する病気
- サルモネラ症
- 猫ひっかき病
動物を扱う客商売だからこそ、ワクチン接種を徹底して「衛生面」と「安全性」に気を配らなければなりません。
保護猫を犬猫愛護団体のシェルターから引き取る場合は、必ず寄生虫の検査も済ませてきましょう。
猫のストレスを緩和する方法は?
猫には、自分だけの空間を好む性質があります。
つまり、どんなに人懐っこい猫でも人間に囲まれている時間が長くなればなるほど、ストレスが蓄積していくのです。
猫が身体と心を健やかに保てるよう、下記のような方法でストレスを緩和させてあげましょう。
▼ストレスを緩和させる方法
- 空間にゆとりのある、広い店舗を確保する
- バックヤードなど、猫だけで過ごせる休憩スペースを確保する
- 3日に1度は休ませるなど、猫に連日勤務をさせない
- 1対1で接客できる個室を設けるなど、複数のお客さんと同時に会わせないようにする
- 扱いが雑になりがちな子供の来店を制限し、ルールを守れる大人だけの会員制にする
まとめ
猫カフェは、日本発祥の固有のビジネスです。
近年では猫カフェを目当てに海外から訪れる外国人も増えており、「もう一度来日して今度こそ行く!」と決意表明したオリンピック選手もSNSで話題になりました。
ただし、生き物を扱う接客業である以上、何より「衛生管理」と「安全対策」が大前提。
「トイレ臭の対策」や「ワクチン接種」の徹底は、リピーターを増やす効果的なマーケティング戦略と同義なのです。