カフェ・喫茶店の開業に調理師免許は必要?役立つ資格・スキル・届出を解説
目次
カフェや喫茶店の開業を目指している方にとって悩ましいのが、関連する免許や資格の多さ。そこで本記事では、カフェや喫茶店の経営にはどんな資格や届出が必要なのか、役立つ免許やスキルと合わせてまとめてみました。
カフェ・喫茶店の開業に「調理師免許」は必要?
カフェや喫茶店の開業を目指している生徒さんから、よく「調理師免許は必要ですか?」「調理師を雇うべきですか?」という質問を受けます。
しかし、カフェや喫茶店で飲み物や食事を提供するからと言って、調理師免許を取得する必要も調理師を雇う必要もありません。
たとえば、運転免許証を持っていない人は公道で車を運転することができません。これに対し、調理師免許とは、あくまで「正しい調理の知識を理解している人」であると証明するための免許です。
つまり、カフェや喫茶店を含む飲食店営業に調理師免許の取得が義務付けられている訳ではなく、運転免許証のように持っていないと行動が制限されることもありません。
あくまで、「持っているとお店の信頼性が増す」という位置付けなのです。ただし、フグのように生命に関わる専門の知識が求められる特殊な食材を扱う料理人は、名称独占資格という国家資格にあたる「フグ調理師」の免許が必須となります。
カフェ・喫茶店の開業に「酒類販売業免許」は必要?
結論から言うと、カフェや喫茶店の「店舗内または敷地内」でアルコールを提供する場合は特別な免許・資格は必要ありませんが、テイクアウトで提供する場合は「酒類販売業免許」が必要です。
アルコールの取り扱いは酒税法に基づき、販売先や販売方法によって取得すべき免許が定められています。
中でも、最もポピュラーで全アルコール類の販売が認められているのが、酒類販売業免許の一種である「一般酒類小売業免許」です。
▼酒類販売業免許(一般酒類小売業免許)が必要なケース
- テイクアウトでアルコールを提供する場合
- 酒屋やリカーショップのように、アルコール類をビンやボトルで販売する場合
つまり、一般酒類小売業免許を取得していないカフェで、いつもは店内で提供しているワインをボトルごと馴染み客の持ち帰り用として販売した場合、酒税法違反になってしまうのです。
また、深夜0時以降にアルコールを提供するカフェには、深夜酒類提供飲食店営業開始届出書の提出が義務付けられています。
▼酒類を扱うカフェや喫茶店に必要な免許・届出
- 深夜0時まで、店舗内でアルコールを提供する場合:必要な免許はない
- 深夜0時以降も、店舗内でアルコールを提供する場合:深夜酒類提供飲食店営業開始届出書の提出が必要
- アルコールのテイクアウト:一般酒類小売業免許が必要
新型コロナウイルスによる影響で、カフェを含む多くの飲食店が苦境に立たされています。
そこで、国税庁は飲食店の救済処置として「期限付きの酒類小売販売免許」を新設しましたが、申請期間は2020年6月末で終了しています。
カフェのコンセプトとしてアルコールのテイクアウトを計画している場合、今後は通常通り自店舗の所轄税務署にて「一般酒類小売業免許」を取得しましょう。
カフェ・喫茶店の開業に「必要な資格」2つ!
この段落では、カフェ・喫茶店を開業する際に必要な2つの資格について解説します。
▼カフェ開業に必要な資格
- 食品衛生責任者
- 防火管理者(収容人数が30名以上のみ)
どちらも、開業前に取得しておかなければなりません。
食品衛生責任者:飲食店に必須の資格!
食品衛生責任者とは、カフェや喫茶店に限らず全ての飲食店で必ず1名以上、有資格者の在籍が義務付けられている資格です。
食品を取り扱う施設では、施設ごとに営業許可を取り、また、食品衛生責任者を置く必要があります。
食品衛生責任者は各都道府県等の食品衛生協会において講習会を実施しています。
また、栄養士、調理師、製菓衛生士等の資格をお持ちの方は講習会を受講しなくても食品衛生責任者になることができます。
詳細は管轄の保健所もしくは食品衛生協会にお問い合わせください。
カフェをオープンする前に保健所で営業許可申請をする際に必要となるため、事前に所定の講習を受講して資格を取得しておきましょう。
ただし、講習は定期的に開催されていますが地域によって頻度は異なります。
あらかじめ、最寄りの保健所のホームページで告知されているスケジュールを確認してください。
▼食品衛生責任者の取得方法と申請方法
- 取得方法:各都道府県の食品衛生協会が開催している講習を受講する(地域によってテストあり)
- 講習の案内&受付先:保健所のホームページ
- 講習の所要時間:丸1日
- 申請料:約1万円
- 資格取得後の申請先:最寄りの保健所
- 申請のタイミング:保健所に店舗の営業許可申請をする時(店舗が完成する約10日前まで)
- 必要書類:営業許可申請書/店やキッチンの間取り図/食品衛生責任者の資格証明書
ちなみに、食品衛生責任者の資格は全国共通です。
したがって、大阪で取得した人が新たに東京でカフェをオープンする場合、食品衛生責任者の資格を取り直す必要はありません。
防火管理者:収容人数が30名以上のカフェに必須!
防火管理者とは、店舗の収容人数が30名以上の飲食店に対し、取得が義務付けられている資格です。
店舗の収容人数とは、「客席数+店員数」で算出します。
防火管理者とは、多数の者が利用する建物などの「火災等による被害」を防止するため、防火管理に係る消防計画を作成し、防火管理上必要な業務(防火管理業務)を計画的に行う責任者を言います。
消防法では、一定規模の防火対象物(*1)の管理権原者(*2)は、有資格者の中から防火管理者を選任して、防火管理業務を行わせなければならないとされています。
防火管理者の選任が必要な防火対象物は、次の「防火管理者の要件」をご覧ください。
*1 防火対象物:建築物や工作物など、火災予防の対象となるもの(の全体)をいいます。
*2 管理権原者:防火対象物の所有者や借受人、事業所の代表者など、管理行為を当然に行うべき者(防火管理の最終責任者)をいいます。
防火管理者の有資格者は、死傷者を伴う火事が発生しないよう、避難経路や火災報知器などに責任を負わなければなりません。
▼防火管理者の資格取得方法と申請方法
- 取得方法:日本防火・防災協会が開催している講習を受講する
- 講習の案内&受付先:管轄の消防署、または日本防火・防災協会
- 講習を受けるタイミング:設計が完成した後
- 資格取得後の申請先:管轄の消防署
- 申請のタイミング:店舗の開業日まで
- 必要書類:防火管理者選任届
講習の内容はさほど難しくありませんが、店舗スペースの広さによって種類が異なります。
つまり、資格取得の必要性を判断するには「正確な座席数」が、受講する講習の種類を判断するには「正確な延べ面積」が必要なのです。
▼延べ面積が300平方メートル以上の店舗
- 講習の種類:甲種新規講習
- 講習の所要時間:約10時間/2日間講習
- 受講料:7,500円
▼延べ面積が300平方メートル未満の店舗
- 講習の種類:乙種講習
- 講習の所要時間:約5時間/1日間講習
- 受講料:6,500円
コーヒーの味・質に役立つ「資格」や「スキル」
カフェや喫茶店を開業するなら、何よりも「コーヒーの味や質」にこだわりたいところです。
コーヒーを提供するために必要な免許はありませんが、資格やスキルによって味や質をグレードアップさせることは可能です。
なお、カフェや喫茶店の開業に役立つ免許・資格・スキルに関しては下記の記事でも詳しく解説しております。
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JBA認定バリスタライセンス
日本バリスタ協会と提携している専門スクール、または民間の協会・団体で取得できる資格で、試験は筆記だけでなく、実技の試験もあり、エスプレッソの本場、イタリアの実用的な知識と技術が習得できるのが魅力。
カフェ経営をしながら認定講座を受講している現役オーナーも少なくありません。
- 主催:日本バリスタ協会(JBA)
- 資格試験の対象:JBA認定のカリキュラムの受講、または1年以上カフェで働いた経験者
- メリット:エスプレッソマシンの使い方を基礎から学べる
コーヒーマイスター
コーヒーマイスターは、日本で初めて登場した民間のコーヒー認定資格です。
こちらの有資格者は、コーヒーに関する知識や基本技術が身につく形です。
- 主催:日本スペシャルティコーヒー協会
- 資格試験の対象:養成講座の受講を終了した日本スペシャルティコーヒー協会の会員のみ
- メリット: 資格取得後も、協会がコーヒーに関する情報を提供してくれる
コーヒーインストラクター検定
コーヒー豆そのものを学びたいという方におすすめなのが、コーヒーインストラクター検定です。
検定は難易度によって2級・1級に分かれており、自家焙煎のコーヒー豆を販売しているカフェオーナーに支持されています。
- 主催:全日本コーヒー商工組合
- メリット:コーヒー鑑定士検定、またはコーヒー鑑定士になれる
Qグレーダー
コーヒー鑑定士の資格には数多くの種類がありますが、SCAAが定めた唯一の国際的な資格はQグレーダーだけ。
3年間ごとの更新試験が規定されているのは、「最新の知識・技術を継続して追求してこそコーヒー鑑定士!」という理念がベースにあるからでしょう。
- 主催:米国スペシャルティコーヒー協会(SCAA)
- 資格試験の内容:6日間連続の研修・試験を受講/味覚・嗅覚の審査
- メリット:コーヒー豆の味や質を、客観的に評価できるようになる
民間のスクールや団体のカフェ開業コース
コーヒーに関するスキルはもちろん、開業準備のサポートからオープン後の経営戦略まで、カフェ経営に必要なノウハウを一通り学べるのが最大の魅力。
「何から始めたら良いのか分からない」「一人で進める自信がない」という方におすすめです。
- 主催:民間のスクールや団体
- 資格取得の対象:カフェ開業コースの受講
- メリット:利益を出す仕組み/メニュー開発/PR戦略/店舗の選び方なども学べる
フードを提供するカフェに役立つ「免許」や「資格」
カフェでフードを提供するからといって、特別な免許や資格を取得する必要はありません。
しかし、「お客様から信頼されたい」「メニューの幅を広げたい」という場合は、フードに関する免許や資格の取得をおすすめします。
調理師免許
調理師免許はカフェや喫茶店の開業・経営に不要です。
その一方で、下記のような2次的メリットがあります。
▼カフェオーナーが調理師免許を取得するメリット
- 食品衛生責任者の講習が免除される
- 料理に関して精通しているとアピールできる分、お客様の信頼や安心感につながる
栄養士免許
健康志向のカフェを開きたい方は、栄養士免許の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
フードコーディネーターや野菜ソムリエよりは難易度が高いものの、信憑性が格段にアップするのはもちろん、メニューの幅が広がってコンセプトカフェを開業する大きな武器になります。
- 免許取得の方法:栄養士養成コースの指定学校を卒業
- メリット:食品衛生責任者の講習が免除される
アルコールを提供するカフェに役立つ「免許」や「資格」
日中はカフェとしてコーヒーや軽食を、夜はバーとしてアルコールを提供するといった「切り替え式の営業手法」を取り入れている店舗も増えています。
そこでおすすめしたいのが、下記のようなアルコールに関する免許や資格です。
▼アルコールに関する免許や資格
- テイクアウト:酒類販売業免許(一般酒類小売業免許)
- 若い女性がターゲット:ソムリエ/カクテル検定
- 男性客がターゲット:ビアテイスター/バーテンダー/テキーラマエストロ
メインとなる客層、つまりターゲットとなる層によって取得する免許・資格を選ぶのがコツです。
カフェ・喫茶店の開業に「必要な届け出・申請」
カフェや喫茶店を開業する際、免許や資格といったスキル以前に数多くの届け出や申請が必要です。
届け出によって申請先が異なりますので、下記を参考にして下さい。
▼保健所に申請する届け出
- 飲食店営業許可申請:全てのカフェ、喫茶店に必須
- 菓子製造業許可申請:パンやケーキなどを店内で製造販売する場合
- 第一種動物取扱業:ドックカフェなど、動物を扱う場合
▼消防署に申請する届け出
- 防火管理者専任届:客席と従業員を合わせた収容人数が30名を超える場合
- 防火対象物使用開始届:新たに建物の一部を使用し始める場合
- 火を使用する設備等の設置届:オーブンやガスレンジなど、火器設備を使用する場合
▼警察署に申請する届け出
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書:深夜0時以降も、アルコールを提供する場合
▼税務署に申請する届け出
- 個人事業主の開業(廃業)等届出書:個人で開業する場合
- 所得税の青色申告承認申請書:事業主として所得を申告する場合
- 給与支払い事務所の開設届:従業員を雇う場合
まとめ
調理師免許がなくても食品衛生責任者の資格さえあれば、カフェや喫茶店を開業することは可能です。
とはいえ、コンセプトや提供するメニューによっては、役立つ資格やスキルは沢山あります。
まずは、「どんなカフェを目指しているのか」「経営を黒字化するには何をプラスするべきなのか」、この2点から取得する免許・資格を選んでみてはいかがでしょうか。